誰もがPRIDEを持って生きられる社会のために。僕は伝える。
社内外でLGBTQ ALLYの活動をする、林さん
こんにちは、なかのひと、スミです。
私が勤めるベルシステム24(以下、「当社」「ベル」)には、いろんな背景や才能、資格を持った、多様な人たちが働いています。
そんな多様な仲間たちの存在を知ってほしい。自分らしい生き方や得意なことを最大限に尊重し、社内の制度を活用しながら、仕事でもプライベートでも活躍されているユニークな人たち。また、その人たちを通して、当社が多様性を受け入れ、多様な働き方ができることを伝えたい。
なぜなら、聴覚障害を持つ私もまた、自分が活きるデザインの仕事で、チャットなどのコミュケーション上の工夫・サポートをしてもらいながら、自分なりの働き方をさせてもらえている当事者だから。
そんなことを思い、ユニークな社員を紹介するポスターを作り、社内でも展開を続けています。
過去のシリーズはこちら
らしく生きる マイワーク×マイライフVol.1
歌手とラジオDJ歴20年。仕事も夢も家族との時間も大事に生きていくベテランスーパーバイザー
前編
https://www.jimotatsu.com/special/j1/myworkmylife-vol1-part1.html
後編
https://www.jimotatsu.com/special/j1/myworkmylife-vol1-part2.html
らしく生きる マイワーク×マイライフVol.2
「なにかあったら言ってね」に支えられて23年勤務。家族の時間もキャリアもあきらめない
https://www.jimotatsu.com/special/j1/myworkmylife-vol2.html
今回ご紹介するのは、林 健太郎さん。
当社の重要なダイバーシティ施策の一つ、LGBTQに関して社内外で広く活躍。自らゲイであることを公表し、ジモタツでも「健茶(けん・ちゃ-)」というペンネームで多くの記事を出しています。
ジモタツ 健茶(けん・ちゃ‐)の投稿一覧
https://www.jimotatsu.com/-/
2000年 | 福岡センターにバイト感覚で入社、職場でもカミングアウト |
2013年 | 神戸へ転勤。持前の末っ子気質でチームをけん引 |
2017年 | 社内研修で自分に「ポジティブなライフイベント」が少ないと痛感 |
2018年 | 大阪レインボーフェスタに社員を募って参加、社内ALLY活動開始 |
2018年 | ベルが「PRIDE指標2018」ブロンズ取得 |
2019年 | ベルが同性パートナーを一部福利厚生の対象に含め人事労務規程を改定 |
2021年 | 宝塚市にて「パートナシップ宣誓」、配偶者申請が会社に受理される |
2022年 | 札幌へ転勤、6月に大阪で披露宴開催 |
バイト感覚で入社して22年。カミングアウト後の反応に変化も
夢を追うでもなくフラフラ~としていた20代前半の頃、知り合いがベルで働いてたので、私もつなぎのバイト感覚で働き出したことがきっかけです。軽い気持ちで勤務し始めましたが、正社員登用を経て、勤続22年目を迎えました。
すごいですね。22年の中で、林さんは、同僚やクライアントにもカミングアウトされていると聞いています。最初は、いつどんなきっかけでカミングアウトされたのですか?
学生時代から友達には話していたので、入社時は友達同様の感覚で、親しくなった社内の方には、普通に話していましたね。
クライアントの方にもカミングアウトされたんですよね。
そうですね。入社当初の職場は、クライアントのオフィス内にあるセンターだったんです。クライアントの方々と同じ職場で仕事をしていると、密接にコミュニケーションをとる機会が多くなるので、自然とプライベートな会話も多くなります。ですから、「クライアントだから」ということは考えずに、“同じ職場で働く年齢が近い仲間”という感覚で話していました。意を決してカミングアウトする、という感じではなかったですね。
相手が誰だからということではなく、”親しくコミュニケーションをとる相手には、自分のことを隠すことなく話す”という感じです。
周囲の皆さんの理解や調整など、大変なことはなかったのでしょうか?
実は当時の上司は、私がいないところで、「彼がゲイであることはクライアントにはあまり話さないように」と周りの社員に伝えていたんだそうです。それを聞いた当初は疑問に思いましたが、その後自分がマネジメントする立場になった時に、「ネガティブな印象を持たれる可能性があることを、あえてこちらから言う必要はない」という上司の考え方を理解することができました。当時の時代背景を考えても、上司の考え方は間違っていなかったと思います。
私自身は、働く上でマイノリティであるが故に苦労した、と感じたことはないんですが、今思えば、それは周りの皆さんがフォローしてくださったからであり、恵まれた環境で仕事ができたと思っています。
時代とともに相手の反応に変化を感じることはあるんでしょうか?
そうですね、20年前は、カミングアウトすると、驚いたり、気まずそうにされたり、逆に急に踏み込んだ質問をされることもありました。「私は偏見を持っていませんよ」と言う方もいて、『偏見』という言葉にも違和感を覚えることがあったり・・・。
それに比べると、最近は、驚かれることが少なくなりましたね。また、実はカミングアウトする機会自体も減ってるんです。特にベルの各拠点に貼られている私のポスターを見てくれている方が多くて、自分から言わなくても認知されているんです。ポスターを見て好意的に声をかけてくださる方もいるほどで、これは私の中で大きな変化でしたね。
そうなんですね、ポスターがご本人の役に立っているのならうれしいです。
はい。ある方からは、「誰にも言っていないのですが、自分も当事者です」と声をかけていただき、長年の切実な想いを話していただきました。面識のない私に声をかけて話をすることは、勇気がいることだったでしょう。その方には、私の経験をお話しすることで、多少なりとも力になれたかなと思います。
また、パートナーと社宅で暮らしたいと思っている方からも相談を受け、人事との間に立ち、解決方法を得たこともあります。そんなふうに、私の経験がほんの少しでも他の方の役に立てばうれしいですし、これまで活動してきた意味があると思っています。
「自分にはポジティブなライフイベントがない」→会社にパートナーを認めてもらうための活動開始
林さんは2017年から個人でALLYやPRIDE指標認定のための活動を始め、2018年からは会社の同僚と「大阪レインボーフェスタ」に参加をされていて、その後も継続されています。きっかけはなんだったのでしょうか?
2017年に初めて、社内のネットワーキング活動で「自分のキャリア形成」を考えるチームに参加したんです。
その時、参加者の皆さんが “結婚、出産、育児、子どもの独立”
といった人生の節目に合わせたキャリアプランを描く様子を見て、「自分にはポジティブなライフイベントがないな…」と感じたのが、最初のきっかけだと思います。
「会社にパートナーとの結婚を認めてもらうことができたら、自分のキャリアプランも変わるかもしれない」と思い、そこからいろいろと調べ始めました。すると、LGBTQに関する企業の取り組みを評価する「PRIDE指標」という認証制度があることがわかり、「ベルでも認証を取得してほしい」と思い、個人的に活動を始めたんです。
「PRIDE指標」の認証項目の一つに「社会貢献活動」があり、その実績作りも兼ねて「大阪レインボーフェスタ」に個人で参加しました。その流れで、2018年には大阪エリアの社内20名ほどの協力も得て、ボランティアスタッフとして同イベントに参加することができました。
全国で2番めの規模。多様性の祭典、関西「レインボーフェスタ!2018」にボランティア参加してきた話
https://www.jimotatsu.com/Naka-no-hito/rainbow-fes.html
そういうきっかけがあったんですね。その活動の甲斐あって、2018にはPRIDE指標ブロンズを取得、2019年にはGOLDを取得しましたね!当社のLGBTQ ALLYの活動履歴は、そのまま林さんの社内でのALLY活動とイコールと言っても過言ではないですね。目標だった社外認定資格取得後も、社内ALLY活動の中心メンバーとして活動していると思いますが、活動を続けている理由は何でしょうか?
当社のダイバーシティ推進およびLGBTQに関する取り組みの歩み
2017年5月 | ダイバーシティ全般に関する社内ネットワーキング活動を開始 |
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2018年8月 | 全社員対象にEラーニングによるLGBT啓蒙活動を開始 |
2018年10月 | 「PRIDE指標2018」ブロンズを受賞 |
2018年10月 | LGBTQについての啓蒙フェスティバルに有志が参加 |
2018年11月 | LGBTQ社外有識者による講演会を全社員向けに実施 |
2019年3月 | LGBTQフレンドリー企業が集まる採用イベントへの参加を開始 |
2019年5月 | 社内ネットワーキング活動にてLGBTに特化した分科会の活動を開始 |
2019年8月 | 同性パートナーを一部福利厚生の対象に含め人事労務規程を改定 |
2019年11月 | 「PRIDE指標2019」ゴールドを受賞 |
2020年2月 | SOGIハラスメントを含めたあらゆるハラスメントの防止を目的とした"あらゆるハラスメント撲滅"に向けて取り組みを強化 |
2020年11月 | 「PRIDE指標2020」ゴールドを受賞(2年連続) |
2021年6月 | LGBTQの啓蒙活動「ベルプライド月間」施策を実施 |
2021年8月 | 婚姻の平等(同性婚の法制化)に向けたキャンペーン「Business for Marriage Equality」への賛同を表明 |
2021年10月 | 性の多様性を祝う式典「レインボーフェスタ!2021」に参加 |
今は、ネットワークがどんどん広がるのが楽しくて続けているんだと思います。一つの活動から、社内外問わず、コミュニケーションが波紋のように広がっていくのが楽しいんです。
例えば「大阪レインボーフェスタ」では、“イベントを成功させる” という共通目的を持って取り組み、関係者の皆さんとは社内外問わず、友人と呼べるような関係を築くことができました。そうした楽しさが、活動を続けている大きな理由の一つだと思っています。
また、ありがたいことに、こうした活動に対し、社内での反応が好意的なんです。ネガティブな反応が多かったら、心が折れて続けられなかったと思います。一方で、匿名のアンケートを実施すると、まだまだフレンドリーではない回答もありますし、社内のALLY活動は今後も続けていきたいです。
今後の目標はありますか?
そうですね。昨年は札幌市のフレンドリー企業認定が取得できたので、続いて大阪市の認定を取得したいと考えています。また、社内には様々な外部相談窓口が設置されていますが、LGBTQ関連に特化した相談窓口はまだありません。数は少ないかもしれませんが、私が相談を受けたように、必要としている方がいる以上、窓口が必要だろうと考えています。その実現に向けて活動を続けていきたいと思います。
パートナーシップ宣誓で社内でも「既婚者」に。周囲が祝福
林さんの活動もあり、社内制度も変わりましたよね。2019年から同性パートナーの配偶者申請も受理されるようになりました。
はい。やはり一番うれしかったのは、会社が私のパートナーを家族として認めてくれたことです。2021年に配偶者/同居申請を会社に受理していただき、社内で正式に「既婚者」となりました。
実はその後私は、神戸から札幌へ異動となったのですが、ベルの新制度のおかげで「単身赴任」扱いになっています。補助もありますし、これには本当に助かっています。
それは良かったですね。林さんは昨年、パートナーシップ宣誓をされたんですもんね。
はい、宝塚市に申請して、正式にパートナーシップ認定をいただきました!
昨年チャットで共有いただいたときは、自分事のようにうれしく思いました。あらためておめでとうございます。
ありがとうございます!
パートナーシップ宣誓をされたきっかけや理由はなんだったのでしょうか?
きっかけは2つあります。1つは、パートナーシップ宣誓が簡単にできるとわかったことです。当時住んでいた宝塚市にパートナーシップ宣誓制度があることは知っていましたが、申請については詳しく知りませんでした。そんな中、大阪市のパートナーシップ宣誓を行った友人から話を聞く機会があり、パートナーシップ宣誓は思っていたよりも簡単にできることを知ったのです。
もう1つは、ベルの配偶者申請は、自治体のパートナーシップ宣誓証明があれば可能だと知ったことです。前述の『パートナーと社宅で暮らしたい』という方から相談を受けたときに、分かりました。
私もいつ転勤になるかわからない身ですから、2021年8月にパートナーシップ宣誓を行い、会社に配偶者申請を提出しました。すると今年(2022年)4月、神戸から札幌へ転勤に! 現在、単身赴任扱いで札幌に勤務しています。いいタイミングでの申請でした。
パートナーシップ宣誓をした時の周囲の反応はいかがでしたか?
おかげ様で、お祝いムード一色でした。当時の神戸のチームメンバーは、11月11日「いい夫婦の日」の朝礼でお祝いしてくれて、サプライズでペアの部屋着セットをプレゼントしてくれたり、友人や家族からも、お酒好きな私たちのためにタンブラーなどをいただきました。結果、今、私の部屋にはタンブラーが12個もあります(笑)。
披露宴もされたと聞きました。
はい、今年6月に挙げることができました。80人ほど招待させていただいたのですが、そのうちの約半数はベルの関係者でした。ベルで働き始めた20代前半当時からお付き合いのある方から、札幌へ転勤して知り合ったばかりの上司まで、たくさんの方にご出席いただきました。あらためて「周囲の皆さんを大事にしていこう」と思えた式でした。また、パートナーとは、「多くの人の前で宣誓したことで、本当の家族になれたね」と話をし、ウルッときましたね。
社長から祝電が来たってホントですか?
はい、野田社長からも祝電をいただき、本当にうれしかったです。社内SNSでも挙式の様子を紹介いただき、お祝いのメッセージをたくさんいただきました。たくさんの方の祝福を受けて、改めて、周りの方の支えに感謝しています。
周りの方を大事にすることで、自分の誇りが成り立つ
最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
自分へのメッセージにもなるのですが…。LGBTQの啓蒙活動は、象徴的な言葉である「PRIDE」が表しているように “自分のことを誇りに思う” ということを掲げる活動ですが、自分の主張を掲げるだけでなく、周囲の方々に敬意を払ってはじめて成り立つものです。
日ごろ、人とのつながりで悩むことがあるかもしれませんが、相手の方を大事にしてこそ、自分の考えや意見を聞いてもらえるのだと思います。挙式を挙げた際にも改めて感じましたが、私自身、「周囲の方を大切にすることが重要なんだ」と、ここ数年強く思っています。こうした考えに共感してくれる方がいれば、うれしく思います。
本日はありがとうございました。
いかがでしたか?
20年以上、北から南まで、様々な拠点で社員やクライアントの皆さんと親交を深めてきた林さん。
式での様子やその報告で、その愛されぶりは、誰の目にも明らかでした。
式場には全国から多くの社員がお祝いに駆け付け、林さんを見守ってきた上司の皆さんは感極まり、その中にはずっと泣いていた方もいたそう。社内SNSでも多くの方から「ケンちゃんおめでとう」と祝福されています。
誰もがみんな、自分らしく生きていける、当たり前に尊び合える世界にしたい、という想いを、林さんを通して見ているのだと思いました。最後の質問で、林さんが話された「PRIDE」が成り立つ仕組みもそれを表現しているようで、響きました。
ケンちゃ、末永くお幸せに。
今日はよろしくお願いします。まずはじめに、林さんが当社で働き始めたきっかけを教えてください。